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真珠は世界最古の宝石だった!
真珠採取の漁港バハレーン島
バハレーン島とはアラビア半島東海岸近くの島です。海にはアラビア湾アコヤガイと黒蝶貝が生息していました。水深が深くない理由から早くから良好な真珠採取の漁港となっていたのですね。
真珠採取の地、ラース・ジャイール貝塚
その島には真珠採りが行われたことを示す遺跡が残っています。南西部にある、ラース・ジャイール貝塚です。柊原貝塚との比較からも興味深い貝塚で、200メートル×100メートルの敷地に0.9メートルのアコヤガイ層が築かれています。前2000年初期の貝塚です。
バハレーン島から太古の真珠が三個発見!
ラース・ジャイール貝塚からは真珠は発見されていませんが、バハレーン島からは太古の真珠が三個発見されているのです。ひとつは、前2000年ごろの真珠で詳細は不明です。もうひとつは紀元前750年ごろの真珠一個で、宮殿か神殿の床の下から、埋葬された蛇とともに出土しました。ギルガメシュ叙事詩には、真珠と蛇は不老不死の象徴だと述べてありましたね。三つ目の真珠は紀元前6世紀の孔が開けられたドロップ型の真珠一個です。これは黒蝶真珠だといわれています。
真珠は「魚の目」と呼ばれていた!
古代メソポタミア世界では、ディルムン(バハレーン島)は真珠採取地であると同時にインダス地方などの貴重あ物品が集まる一大貿易地となっていました。そのディルムンからシュメルの人々が持ち帰った物品一覧を記した粘土板がイラク南部のシュメルの神殿址から発見されています。粘土板にはカーネレイアン、白サンゴ、象牙、亀甲などとともに「魚の目」三個と記載された物品がとうじょうします。
カーネリアンや白サンゴとは当時高価な宝石でしたが、「魚の目」はそれらと一緒に列挙され、量や重さだけでなく、三個という個数で記されています。また、シュメル後には真珠に該当する語彙が見当たりません。そうしたことから、「魚の目」は真珠と考えられています。
真珠は世界最古の宝石だったのです!
シュメル人は5500年ごろにイラクで最古の文明を築いた人々でした。彼らが海を渡って入手した真珠は、世界最古の宝石であり交易品のひとつでした。
(参考文献: 真珠の世界史 富と野望の五千年 中公新書)